和歌山の遺言について(2)自筆証書遺言の検認手続き

自筆証書遺言の検認手続き

1.自筆証書遺言の検認とは

  自筆証書遺言書(遺言者が自分で書いた遺言書のこと)の保管者または遺言書を発見した相続人は、遺言者の死後、家庭裁判所で検認という手続きを行わなければなりません(民1004)。

 これらの者には検認申立をする義務があり、もし、検認を経ないで遺言の内容を実行したり、故意に遺言書を隠したりすると、過料に処せられたり(民1005)、相続能力や受遺能力を失ったり(民891Ⅴ、965)しますのでご注意ください。

 検認をする理由は、遺言書を家庭裁判所に提出させることによって、遺言書の現状を確定することにより、遺言書の偽造や変造を防止するためです。

 よって、遺言書を発見した際はそのままの状態で検認の手続をとってください。

 また、封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人などの立会いの下で開封しなければならないとされているので、遺言書が封筒に入っている場合、あやまって開封してしまったとしても遺言が無効になることはなりませんが、変造や偽造の疑いをかけられる可能性もありますので、開封せずにそのまま検認の手続をとってください

 また、遺言書に基づいて不動産の相続登記手続きをする際に、検認手続きを経た遺言書であることが必要となります。

 なお、上記のとおり、検認はあくまでも遺言書の現状を確定するだけであって、遺言が遺言者の真意によってなされたものであるか、遺言能力があったのか、等といった遺言の有効無効については何ら判断されませんので、後にこれらを理由として遺言の効力を裁判などで争うことはできます。

 遺言の無効・取消しについてはこちらの記事↓もご参照ください。

  ※和歌山の遺言について(3)遺言の無効・取消し

 一方、公証役場で作成する公正証書遺言については検認手続きは不要です。

2.検認手続きについて

(1)申立方法

 申立人は、遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人です。

 申立先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

 手数料は、遺言書1通につき収入印紙800円と切手を予納します。

 必要書類は、

  ①申立人と相続人全員の戸籍謄本、

  ②遺言者についての出生から死亡までの戸籍謄本、

  ③遺言書の写し、です。

  ※遺言書の原本は、申立後に指定される検認期日に申立人が持参します。

 なお、申立書には相続人全員の住所を記載しなければならないため、住所がわからない場合には住民票や戸籍の附票を取得するなどして調査する必要があります。

 戸籍謄本等の収集が困難であれば、弁護士や司法書士等の専門家に依頼した方がスムーズに手続きが行えると思います。

(2)申立後の流れ

 家庭裁判所から、相続人全員や利害関係人に対し、検認期日の通知書が送付されます。検認期日は、申立日からおおむね1か月後に指定されることが多いです。

 検認期日当日、申立人が遺言書の原本を持参し、相続人や利害関係人の立会いの下、家庭裁判所が遺言書の開封や調査を行います。もっとも、相続人や利害関係人が期日に来なかったとしても手続きはそのまま行なわれます。

 検認が済むと、申立人に対し、検認済証明書が末尾につづられた遺言書原本が返還されます。

 家庭裁判所から、期日に立ち会わなかった相続人や利害関係者に対し、検認がされたとの通知書が送付されます。

 以後は、検認済み遺言書によって、不動産の相続登記手続きなどの相続手続きを行うことができます。

以 上

なかむら法律事務所・司法書士事務所(和歌山市)

弁護士・司法書士 中村和也