和歌山の養育費について(2)合意後の養育費の減額

合意後の養育費の減額について

1.養育費減額の条件

 離婚の際、当事者間で、あるいは裁判所の調停や審判で、養育費の額が合意されたとしても、後日、その合意当時に予想できなかった「事情の変更」があったときは、減額(あるいは増額)をすることができます。

 当事者間での話し合いにより変更することもできますし、裁判所に対し、調停や審判を申立てることもできます。

 なお、調停は相手方の住所地の裁判所に、審判は子の住所地に、それぞれ申立てることができます。

2.減額できる「事情の変更」とは

では、養育費の額の変更ができる「事情の変更」とはどのようなものが考えられるか、以下、養育費の減額に絞って説明します。

(1)養育費を払う側(義務者)の収入の減少

 これは例えば、義務者が、勤務先から給料を削減されたり、勤務先をリストラなどで退職するなどして、合意当時よりも収入が減少した場合をいいます。

 養育費の額は、義務者の収入額に応じて定められますので、収入が減少したことは減額の理由になりえます。

 もっとも、収入の減少額が、養育費の減額をするほどのものではない場合には、減額は認められません。

 例えば、諸事情にもよりますが、年収500万円の方が5%程度低下したとしても、養育費の減額は認められないことが多いでしょう。

 また、義務者が自己破産をした場合にも、減額が認められることがあります。

(2)養育費を払う側(義務者)の家庭環境の変化

 これは例えば、義務者が再婚し、その再婚相手が無職あるいは低収入であったり、再婚相手との間に子どもができた、あるいは、義務者が再婚相手の未成年の連れ子と養子縁組した、といったように義務者が扶養しなければならない家族が増えた場合をいいます。

 このような場合、義務者は、再婚相手や子をも扶養しなければならなくなりますので、離婚した相手との間の子にかける養育費が前より小さくなっても仕方がないからです。

 例えば、再婚相手に収入がなく、養子縁組した連れ子が10歳程度だとすると、場合によっては、養育費の額が3分の1程度に減額されることもありえます。

 反対に、再婚相手に十分な収入がある場合には、その収入で再婚相手やその間にできた子の生活を維持することができますので、義務者が離婚した相手との間の子に支払う養育費を減額することはできません。

(3)養育費をもらう側(権利者)の家庭環境の変化

 これは例えば、権利者が再婚し、再婚相手に収入があり、子どもが再婚相手と養子縁組した、といったように、子どもの扶養に変化があった場合をいいます。

 法律上、子どもを扶養する義務は、実の親にありますが、子どもが養子縁組した場合、養親が第一に扶養義務を負うことになります。

 ですので、連れ子が再婚相手と養子縁組した場合は、原則として、養親が養育費を負担すべきとなりますので、義務者は養育費の負担を免れることとなります。

 なお、連れ子が再婚相手と養子縁組したかどうかを確かめる方法は、離婚したとしても親は子の戸籍謄本を取得できますので、子の本籍地の役所で子の戸籍謄本を取得すれば、養子縁組の有無が分かります。

 もっとも、養親が第一に扶養義務を負うとはいっても、実の親の扶養義務が消滅するということではありませんので、もし、養親に連れ子を養育するのに充分な収入がない場合、義務者が引き続き養育費を支払うということになります。ただ、養親が負担する分については、義務者の養育費が減額されるということも考えられます。

  注意すべきなのが、再婚相手に相当な収入があったとしても、再婚相手と連れ子が養子縁組しなければ、法律上、再婚相手は連れ子を扶養する義務はありませんので、原則として、義務者は引き続き養育費をそのまま支払うということになります。

(4)子どもの事情

 これは例えば、合意当時、子どもを学費の高い私立の学校に通学させており、将来も学費の高い学校に進学させる予定であるとの前提で、教育費を高めに見積もって養育費の額が決められていたものの、後になって、学費の低い学校に通学進学することとなった、というように、子どもにかかる教育費などが合意当時の見通しよりも低くなった場合をいいます。

 合意当時、どのような前提で養育費が決められたのかが重要となり、この点につき、当事者間で争いとなることがよくありますので、養育費の合意の際にはこのような前提事項についても文章に盛り込むなどの工夫をされるのがよいかと思います。

以 上

なかむら法律事務所・司法書士事務所(和歌山市)

弁護士・司法書士 中村和也