和歌山の養育費について(1)養育費滞納による給与差押え
養育費滞納による給与差押え
1.給与の差押えについて
離婚の際、例えば、「夫が妻側に対し、子が満20歳になるまで、養育費として毎月3万円支払う」、といったような養育費の支払いに関する取り決めがなされることがあります。
このような取り決めが、調停調書、審判、判決といった裁判所が作成する書面に記載されている場合や、公証人が作成する公正証書(執行証書)に記載されている場合には、養育費の滞納があったとき、元妻は、裁判所に申立をすることで、元夫の勤務先が元夫に支払う給料に対し、差押えをし、差し押さえた給料から養育費を強制的に取り立てることができます。
もっとも、前提として、元妻が元夫の現在の勤務先を知っている必要があります。
そして、差し押さえできる範囲は、養育費の場合、給料の半分にまで及ぶので、毎月、最大で給料の半分を回収できることとなります(取り決めた毎月の養育費支払額が上限ですが)。
さらに、養育費の場合、その一部の滞納があれば、まだ支払期限が来ていない将来分の養育費についても、一括して差し押さえることができます。
これは、期限が来るごとに少額の養育費につき差押え手続きを繰り返さなければならないという負担を解消するためのものです。
つまり、上記の例では、1回差し押さえをしておけば、子が満20歳になるまで、元夫の勤務先が元妻に対し、元夫の毎月の給与から毎月3万円を送金することとなり、順次回収することができることとなります。
2.給与の差押えを解除できるか
では、差し押さえられた側(上記の例では元夫)は給与の差押えを解除してもらうことはできるでしょうか?
元夫からすれば、勤務先に対し養育費滞納を知られたうえ、送金の手間などの迷惑をかけることとなりますし、元夫自身も仕事上の不利益を受けることとなるかもしれない、という事情から、いち早く給与の差押えを解除してもらいたいと思うでしょう。
しかし、結論から言いますと、給与の差押えを解除することは非常に困難です。理由は以下のとおりです。
とり得る可能性のあるものとしては、(1)差押えに不服申立てをする方法、(2)差押えを(一部)取り消してもらう方法、(3)差押えを取り下げてもらう方法、といったものが考えられます。
(1)については、差押えの手続きが違法なものであった場合や養育費の支払い義務が既に消滅している場合などになされるものですが、通常、このような事情はあまり考えられません。
(2)については、例えば、養育費の金額が、その後の事情の変更(元夫側や元妻側の再婚など)によって減額されるべき状況にあることを理由に、減額分について差押えを一部取り消してもらう方法などが考えられますが、一度合意した養育費を減額するには、双方が再度合意するか、その旨の調停調書や審判が必要となります。調停や審判となれば時間もかかりますし、減額の理由となる事情の変更も軽微な変更では認められないため、確実な方法とはいえません。
(3)については、取下げするかは差押えの申立人が決めることになりますので、元夫が元妻と話し合い、今後はきちんと支払うから差し押さえを取り下げてくれないかと頼み、元妻に取下げ手続きをしてもらう、というものです。元妻側からすれば、養育費が確実に回収できる差し押さえを取り下げるメリットはあまり考えられず、応じてくれる可能性は低いでしょう。ただ、差押えをこのまま続ければ、元夫が勤務先を辞めないといけなくなるといった事情があれば、妻側にも取り下げるメリットがないとはいえないかもしれません。
以 上
なかむら法律事務所・司法書士事務所(和歌山市)
弁護士・司法書士 中村和也