和歌山の遺産分割調停について(なかむら法律事務所)

Ⅰ 遺産分割調停をすべきか

 遺産分割調停とは、家庭裁判所において、第三者(調停委員など)の立会いのもと、相続人それぞれの言い分を調整し、合意を目指す手続きのことです。

 調停をすべきケースとしては、下記のようなケースが考られます。

 ①争っている事項が少ない場合(例えば、相手に支払う金額だけが合意できない場合など)

 ②主な事項は合意できているが、些細な点で合意できない場合

 ③感情的になるので、話し合い自体ができない(したくない)場合

 ④こちらの言い分の根拠となる証拠が十分そろっていない場合(審判や訴訟では解決困難な場合)

 

 

Ⅱ 遺産分割調停の申立てから調停成立までの流れ

1.遺産分割調停の申立て

(1)調停手続きの開始

 遺産分割調停は、相続人が家庭裁判所に調停の申立をすることによって開始します。

 申立をする相続人は、相続人一人でも可能ですし、複数人でも可能です。

 申立てた相続人を「申立人」、その他の相続人を「相手方」といいます。

(2)調停の申立先

 申立てを行う家庭裁判所は、相手方の居住地(注:申立人の居住地ではありません)を管轄する家庭裁判所になります。

 相手方が複数いる場合は、どの相手方の居住地でも構いません。

 相手方が和歌山県に居住している場合の具体的な管轄は以下のとおりです。

○和歌山家庭裁判所本庁…和歌山市、海南市、岩出市、紀の川市、海草郡(紀美野町)、有田市,有田郡(湯浅町 広川町 有田川町)、橋本市、伊都郡(かつらぎ町、九度山町,高野町) ※一部地域につき和歌山家庭裁判所妙寺出張所に申立することも可。

○和歌山家庭裁判所御坊支部…御坊市、日高郡(美浜町、日高町、由良町、印南町、日高川町)

○和歌山家庭裁判所田辺支部…田辺市(旧田辺市、旧日高郡龍神村、旧西牟婁郡大塔村、旧西牟婁郡中辺路町) 、西牟婁郡(上富田町、白浜町、すさみ町)、日高郡(みなべ町)、東牟婁郡(串本町,古座川町)

○和歌山家庭裁判所新宮支部…新宮市、田辺市(旧東牟婁郡本宮町)、東牟婁郡(那智勝浦町、太地町、北山村)

(3)調停申立に必要な書類

 申立書…家庭裁判所の窓口に書式が備えられています。希望する内容(自らの希望する取り分、遺産分割の方法、特別受益・寄与分の有無)などを記載します。申立書の部数は、裁判所への提出分と相手方全員への送付分が必要です。

 事情説明書… 家庭裁判所の窓口に書式が備えられています。これまでの経緯や事情を記載します。

 被相続人や相続人の戸籍謄本…本籍地の役所で取得します。

 収入印紙…被相続人1名につき1200円分必要です。

 切手…所定の種類と数量の切手が必要です。詳しくは家庭裁判所にお問い合わせください。

 

2.相手方への呼出状等の送達

 申立後、家庭裁判所から申立人に連絡があり、第1回調停期日の希望日時を聞かれます。

 家庭裁判所から、相手方全員に対し、申立時に提出された申立書と第1回期日の日時が記載された呼出状などが送られます。

 この段階で、相手方は調停申立がなされたことや第1回期日の日時を知ることになります。

 

3.第1回調停期日

 期日に当事者が家庭裁判所に出頭すると、第1回調停期日が行われます。

 調停の進み方は、以下のとおりです。

 まず、申立人のみ調停室に入室します。その間、相手方は控え室で待機します。

 調停室には、調停委員2名がいます。調停委員とは、弁護士等の資格を有する者や人格識見の高い者の中から裁判所に任命・指定された非常勤の公務員で、中立公正な立場で調停を担当する人のことです。

 調停委員は、申立人から、これまでの事情や申立に至った経緯など、申立書の記載だけでは分からないような詳しい事情を聞きます。

 30分ほどで申立人が調停室を退出し、控え室で待機します。

 次に、相手方のみ調停室に入室します。

 相手方となった相続人間で争いがありそうな場合、いくつかのグループに分けられることもあります。

 調停委員は、相手方から、これまでの事情や申立書に対する意見などを聞きます。

  30分ほどで相手方が調停室を退出し、控え室で待機します

 その後も、同様に、相互に調停室に呼ばれ、各相続人の意見を聞きながら、合意できそうな点や争いとなりそうな点を確認、調整していきます。

 よって、相続人同士が直接対面して言い争う、といったことはありません。

 第1回期日は、各相続人がそれぞれ30分間くらい事情を聴取されますが、これまでの事情や双方の意見を確認し、合意できそうな点と争いとなりそうな点を確認するくらいで終わることが多いです。

 期日終了時には、各相続人がそれぞれ次回までに考えておくべき事項を確認したり、次回調停期日の日時を調整して決めます。

 だいたい月に1回のペースで期日が入れられます。

 

4.その後の調停期日

 第2回期日以降も第1回期日と同様に、別々に調停室に呼ばれ、調停委員を介して、各相続人の主張を調整していきます。

 争点(不動産の評価額、遺産の使い込み、生前贈与の有無など)がある場合、証拠書類(不動産の評価書、預貯金の取引履歴など)を提出することもあります。

 争いのある点が少ないケースや互いに譲歩可能なケースでは、2、3回の期日で調停成立となる場合もありますが、争いのある点が多いケースや互いに譲歩しないケースでは、1年以上、期日を重ねることもあります。

 調停は話し合いの場ですので、各相続人が互いに譲歩することが調停成立には不可欠といえます。

 

5.調停成立

 調整の結果、合意ができた場合、裁判官の面前で合意内容の確認がなされ、調停が成立します。

 後日、成立した内容を書面にした「調停調書」が、裁判所で作成されます。

 預貯金や不動産について合意の記載のある調停調書があれば、それらを取得することとなった相続人が調停調書を金融機関や法務局に提出することによって手続ができます(他の相続人の協力は不要です)。

 解決金や代償金の支払いについて記載のある調停調書があれば、後日、約束どおり支払われないときには、差押えなどの強制執行を行うことが可能になります。

 

6.調停不成立

 相続人が調停期日に出頭しなくなったり、これ以上話し合っても調停での合意が困難、という事態に陥ったときは、裁判所の判断によって調停は不成立となり、調停手続きは終了します。

 例外的に、相続人の一部が出頭しなくとも、裁判所によって、相当と思われる解決方法を定めた「調停に代わる審判」が出されることもあります。

 また、申立人が調停を取り下げた場合にも調停手続きは終了します。

 

7.訴訟や審判への移行

 調停が不成立となった場合、手続きを進めるため、審判手続きに移行する、ということになります。

 審判では、裁判官が、当事者の意見や事情を踏まえて、分割方法を決めます。