和歌山の自己破産について(なかむら法律事務所)
自己破産とは、簡単にいうと、主な財産を手放す代わりに、借金の返済義務を消滅させる、という裁判所の手続きのことです。
多額の借金から解放し、家計を立て直す方法として、よく利用されています。
ただし、借金の原因がギャンブル(競艇・競馬・競輪)や株投資(FX)等である場合、自己破産が認められないことがありますので、その場合は、個人再生を検討することになります。
目次
1.自己破産手続き(同時廃止)の流れ
(1)債権者へ受任通知の送付
弁護士が代理人となったことを通知する書面(受任通知)を各債権者に送付します。
受任通知を送った時点で、以降の債権者からの請求をストップでき、返済もする必要がなくなります。
もちろん、新たに借入もできなくなります。
(2)申立てに向けての準備
申立てに必要な書類(借金、財産、収入の状況が分かる書類、破産に至った経緯が分かる書類など)を収集したり作成したりします。
借金の返済がストップしている間、申立に必要な費用(裁判所への予納金、印紙代、弁護士費用)を月々積み立てていただきます。
(3)破産申立
書類が整い、申立費用が用意できたら、弁護士が管轄の裁判所に破産の申立てをします。
申立をする裁判所は、申立人の住所地を基準とし決まります。
具体的な管轄は以下のとおりです。
○和歌山地方裁判所本庁…和歌山市、海南市、岩出市、紀の川市、海草郡(紀美野町)、有田市,有田郡(湯浅町 広川町 有田川町)、橋本市、伊都郡(かつらぎ町、九度山町,高野町)
○和歌山地方裁判所御坊支部…御坊市、日高郡(美浜町、日高町、由良町、印南町、日高川町)
○和歌山地方裁判所田辺支部…田辺市(旧田辺市、旧日高郡龍神村、旧西牟婁郡大塔村、旧西牟婁郡中辺路町) 、西牟婁郡(上富田町、白浜町、すさみ町)、日高郡(みなべ町)、東牟婁郡(串本町,古座川町)
○和歌山地方裁判所新宮支部…新宮市、田辺市(旧東牟婁郡本宮町)、東牟婁郡(那智勝浦町、太地町、北山村)
(4)破産手続開始決定、同時廃止決定
裁判所が破産手続開始決定を出します。
開始決定時点の保有財産が清算の対象になります。
多額の財産がなく、借入原因にも特に問題がなければ、破産開始と同時に廃止(破産手続の終了)となります。
(注:多額の財産があれば、同時廃止ではなく、管財事件として手続が進みます。管財事件は、同時廃止に比べ、手続費用も時間もかかってきます。)
(5)免責審尋
裁判所が本人から事情聴取する審尋という手続き(裁判官の面接)が行われることがあります。
集団(複数人)で一斉に行われることもありますし、個別に行われることもあります。
免責審尋は、借入れの内容に問題(ギャンブル、投資、他人への多額の援助、カードの現金化など)がある場合には行われることが多いです。
(6)免責決定
裁判所が借金の返済義務を消滅させる免責決定を出します。
~順調にいけば、申立から6か月ほどで免責決定が出ます~
2.自己破産の効果
(1)借金の返済義務の消滅
免責決定がなされると、借金を返済する義務が消滅します。よって、債権者から請求されることはなくなります。
(2)破産手続開始時の財産の清算
破産手続開始時点での保有財産は、原則、債権者への配当にあてられます。
もっとも、自由財産については、そのまま保有することができます。
自由財産には以下のようなものがあります。
- 生活に欠かせない家電や家具などの家財道具
- 99万円以下の現金
下記財産についても、自由財産とあわせて99万円以内であれば、そのまま保有することができます(注意:各地の裁判所によって取扱いのルールが異なります)。
- 定期預金、積立金
- 生命保険などの解約返戻金
- 将来支給される予定の退職金(現時点での支給見込額の8分の1で計算する)
- 自動車(時価評価で計算する。なお、新車時の価格が300万円未満で登録後7年以上(軽は5年以上)経っている自動車であれば評価0円とみなす。)
- 賃貸アパートなどの敷金、保証金
3.自己破産の注意点
(1)信用情報への登録
信用情報機関に自己破産をした情報が登録される(いわゆるブラックリスト)ため、免責決定がなされてから5年間はクレジットカードやキャッシング、ローンの利用が困難になります。
もっとも、破産以前から返済を滞納していた状態であったり、ゆくゆくは返済不能になるような状態であれば、いずれ信用情報に登録されますので、破産をしてもしなくとも同じ結果になるといえます。
(2)非免責債権
免責決定がなされても、非免責債権にあたるものについては支払義務が消滅しません。
非免責債権には以下のようなものがあります。
- 税金
- 罰金
- 犯罪行為や重過失の交通事故に基づく損害賠償金
- 従業員への給料
- 養育費や別居中の婚姻費用
- わざと債権者名簿に記載しなかった債権
非免責債権については、破産手続きが終了した後も、債権者から請求されれば、支払う必要があることになります。
(3)免責の不許可
破産手続きが開始されたとしても、免責不許可事由があると免責決定が出ないことがあります。
免責不許可事由には以下のようなものがあります。
- 財産の存在を隠していた場合
- クレジットカードで商品を購入し、その商品をすぐに売却したり質入れすることによって現金化し、借金を作った場合(いわゆるカードの現金化)
- 高級ブランド品の購入、風俗店の利用、ギャンブル(競艇・競馬・競輪・パチンコ)、投資(株・FX)などのために借金を作った場合
- 支払能力がないのに、あるかのように装って借金をした場合
- 財産や収入について虚偽の説明をした場合
- 前に破産免責決定を受けた時から7年以内であること
もっとも、免責不許可事由があったとしても、諸事情を考慮して裁量により免責決定が出されることもあり、事案にもよりますが、実務上は、よほどの事情がない限り、免責決定が出されています。
(4)資格の制限
破産手続開始決定を受けると免責許可決定が確定するまでの間、以下のような資格が制限されます。
- 士業(税理士、司法書士など)
- 警備業者、警備員
- 生命保険募集人、損害保険代理店
- 宅地建物取引業者、宅地建物取引士
- 建設業者、貸金業者
- 後見人、後見監督人
よって、破産手続開始決定から免責許可決定が確定するまでの間、これらの資格の登録を拒否される可能性があります。
また、破産手続開始決定時にこれらの資格や地位を有している場合、資格や地位を失うことがあります。
資格制限について心配な方は、各登録機関に問い合わせて確認されるのがよいかと思います。
また、株式会社の取締役が破産手続開始決定を受けると、その時点で取締役の地位を失います。もっとも、その時点以降に、株主総会決議により再度、取締役に選任することは可能です。
4.破産に対するよくある誤解
下記のような破産に対する正しい知識を備えることが重要です。
・戸籍に破産したことが記載されることはありません。
・選挙権がなくなることはありません。
・破産したことは、官報という政府が発行する新聞のような冊子には掲載されますが、官報は一般市民が常に見ているような性質のものではありませんので、周りの人間に知られる可能性は高くありません。
・生活に必要な家財道具まで持っていかれることはありません。
・家賃の滞納がなければ、借りているアパートを追い出されることはありません。
・破産したことを理由に、刑事責任を問われることはありません。