和歌山の不倫慰謝料について(4)不倫相手からの反論

不倫相手からの反論

 夫(又は妻)が、妻(又は夫)の不倫相手に慰謝料を請求した場合、不倫相手から以下のような反論を受ける場合があります。

 不倫相手の反論が慰謝料請求にどのような影響を及ぼすのか、以下説明します。

1.不貞行為はなかったとの反論

(1)性交(類似行為)や肉体関係はなかった

  ホテルや自宅内で会話していただけ、休息をしていただけ、偶然同じホテルの別室に宿泊していただけ、といった類のものです。

  場所がいわゆるラブホテルであれば、不貞行為の存在を強く推認させますので、会話や休息をしていただけとの反論は通常認められないでしょう。

  ビジネスホテルであっても、仕事上の必要性(打ち合わせ)が認められれば別ですが、不貞行為の存在を強く推認させますので、会話や休息をしていただけとの反論は通常認められないでしょう。

  自宅であれば、単に友人として出入りしていたとも考えられますが、時間帯(夜から朝)や回数(頻繁に出入り)、出入り時の二人の様子(親密な仕草)などの状況によっては、不貞行為の存在が推認され、会話や休息をしていただけとの反論は認められないでしょう。

(2)不貞行為に当たらない

  キスをしただけ、メールのやりとりをしていただけ、手をつないでいただけ、 二人で会って食事しただけ、といった類のものです。

  キスをすることは不貞行為に当たります。

  メールのやりとりも愛情表現を含む親密な内容のものであれば、不貞行為に当たる場合があります。

  手をつなぐことは、それ自体、不貞行為には当たりません。もっとも、手をつないでいた事実は、性交などの不貞行為があったことを推認させる事実ととらえることができます。

  二人きりで会って食事することは、不貞行為に当たりません。もっとも、過去にその相手と不貞関係にあったという事情がある場合には、不貞行為に当たることがあります。

(3)性的不能

  不倫当事者の性的能力がなかったとしても、ホテル等で一緒に過ごすこと自体が不貞行為と同視すべきものといえますので、性的不能との反論は認められません。

2.不倫の証拠が違法なものだとの反論

(1)隠し撮り、隠し録音

  ホテルの出入りや親密な様子をビデオ等で隠し撮りすること、車内等に設置したボイスレコーダーで会話を録音することなどは、著しく反社会的な手段を用いて人格権やプライバシー権を侵害するものではないので、違法なものとまではいえず、証拠として使用できます。

(2)メールやLINE等の無断記録

  保存されているメールやLINEを夫(又は妻)の携帯やスマホで表示されたものを、無断でカメラ撮影したり、無断で別の携帯やスマホに送信することは、通常、著しく反社会的な手段を用いて人格権やプライバシー権を侵害するものではないので、違法なものとまではいえず、証拠として使用できると考えられますが、取得方法によっては違法と評価される余地もありますのでご注意ください。

(3)GPSの無断設置

  車や身の回り品にGPSを無断で設置し、位置情報を取得することは、状況によっては相手のプライバシー権を侵害するものとして違法な証拠と評価され、少なくとも証拠としては使用できない可能性もありますのでご注意ください。

3.既婚者だと知らなかったとの反論

  不倫相手が、夫(又は妻)が既婚者であると知らなかった場合には、慰謝料請求はできないことになります。

  もっとも、不貞関係の途中で既婚者であることに気づいた場合には、その時点以降の不貞行為について慰謝料の支払責任が生じます。

4.夫(又は妻)とうまくいっていない、と聞かされ、そう信じていたとの反論

  不倫相手が、夫(又は妻)から、妻(又は夫)と夫婦関係がうまくいっていない、離婚するつもりだ等と言われ、それを信じていたといった類のものです。

  仮にこのような事情があったとしても、夫婦が別れておらず、離婚もしていないと認識していたのであり、単に夫婦関係の破綻を希望していたにすぎないものであるから、反論は認められません。 

4.不貞当時、すでに夫婦関係が破綻していたとの反論

  不貞当時、すでに夫婦関係が破綻(はたん)していれば、不貞行為によってそれ以上夫婦関係が悪化することはありえないため、慰謝料請求は認められないこととなります。

  夫婦関係が破綻していたかどうかは、婚姻の期間、夫婦の不和が生じた期間、夫婦それぞれの婚姻関係を継続する意思の有無やその強さ、夫婦の関係修復への努力の有無やその期間なだの諸事情を総合して判断されます。

  別居期間の長さ、離婚の意思を表明したか否か、離婚の話し合いをしたか否か、などが重要な要素ですが、決定的なものでもありません。

 一般的に、裁判所が夫婦関係が破綻していたと認定することは、ほとんどありません。もっとも、不貞当時の夫婦関係の悪化の程度に応じて、慰謝料が減額されることが多いといえます。

5.慰謝料は時効で消滅しているとの反論

 不倫慰謝料の時効は、不貞の事実を知ってから3年です(民法709条、729条)。

 3年の時効期間が経過し、相手が消滅時効を主張すれば、慰謝料請求権を失ってしまいます。

 もっとも、時効期間の3年は、「被害者が損害および加害者を知った時」(民法729条)から計算します。

 問題になるのは、不倫行為をしていることは判明したが、夫(または妻)の不倫相手がどこの誰かまではしばらく分からなかったようなケースです。

 この点、不倫相手の氏名と住所が分かれば、慰謝料を請求できます。

 よって、妻(または夫)が、夫(または妻)の不倫相手の氏名と住所を知った時点が、「被害者が損害および加害者を知った時」にあたると考えられ、その時点から3年以内であれば、不倫行為を知ったのが3年以上前であっても、消滅時効にかからず、慰謝料を請求できることとなります。

以 上

なかむら法律事務所・司法書士事務所(和歌山市)

弁護士・司法書士 中村和也