和歌山の不倫慰謝料について(2)不倫慰謝料の判断要素

不倫慰謝料の判断要素

1.慰謝料算定の方法

 不倫相手の不貞行為が、不法行為(民法709条)にあたり、慰謝料請求権が認められるとして、その金額をどのように算定するのでしょうか。

 慰謝料とは、精神的苦痛を慰謝するためのものであり、本来は金銭に換算できない性質のものですので、算定するための絶対的な計算式があるわけではありません。

 裁判例では、諸事情を総合的に考慮して算定しています。

2.慰謝料算定の考慮要素

 諸事情の主な要素としては、(1)不貞開始当時の夫婦の関係、(2)不貞関係が始まった経緯、(3)不貞関係の内容、(4)不貞関係が発覚した後の言動、(5)不貞関係が夫婦関係に与えた影響、などが考えられます。

 以下、順に説明します。

(1)不貞開始当時の夫婦の関係

 ①一般的に、夫婦の関係が、婚姻関係であれば、内縁関係や婚約関係であるよりも慰謝料額が多くなる方向に働きます。

 ②夫婦の婚姻期間の長さが、長くなるほど慰謝料額が多くなる方向に働きます。おおむね婚姻期間が3年以下の場合に減額要素となる可能性があります。

 ③不貞行為以前の夫婦の関係が円満であれば、慰謝料額が多くなる方向に働きます。

 ④未成熟の子がいれば、慰謝料額が多くなる方向に働きます。

(2)不貞関係が始まった経緯

 ①不倫相手が不貞関係の開始や継続に主導的な役割を果たしたことは、慰謝料額が多くなる方向に働きます。

  もっとも、当事者である夫(又は妻)と不倫相手の両方に慰謝料を請求する場合には、両者はいわば共犯として、同じ慰謝料額を請求できるので、どちらが主導的だったかはあまり問題とはなりません。

(3)不貞関係の内容

 ①不貞期間が長いほど、慰謝料額が多くなる方向に働きます。おおむね不貞期間が数か月以下の場合に短期間だとして減額要素となる可能性があります。

 ②不貞行為の回数が多いほど、慰謝料額が多くなる方向に働きます。おおむね回数が数回程度の場合には減額要素となる可能性があります 。

 ③不倫相手との間で、妊娠した、子が生まれた、といった事情があれば、慰謝料額が多くなる方向に働きます。

 ④不倫相手が他にもいたという事情は、不倫相手の慰謝料額を減額する方向には働きません。

(4)不貞関係が発覚した後の言動

 ①不倫が発覚した後や、もう会わないとの誓約をした後や、慰謝料請求をされた後にもかかわらず、不貞関係を継続していれば、慰謝料額が多くなる方向に働きます。  

 ②不倫相手が謝罪したことは、慰謝料額を減額する方向に働くことがあり、謝罪をしていないことは、慰謝料額が多くなる方向に働くことがあります。

 ③不倫をされた夫(又は妻)が、不倫相手に対し、社会常識を超えた嫌がらせ(不穏当なメッセージの送信や勤務先への告げ口など)をした場合、不倫相手の慰謝料額を減額する方向に働くことがあります。

(5)不貞関係が夫婦関係に与えた影響

 ①夫(又は妻)が、不倫当事者である妻(又は夫)に対し、慰謝料を請求しないと約束した事情は、不倫相手の慰謝料額を減額する方向に働くことがあります。

 ②不貞により夫婦が別居や離婚をするに至ったことは、慰謝料額が多くなる方向に働きます。

 ③不倫をされた夫(又は妻)が、不倫をした妻(又は夫)から、一定額の慰謝料の支払いを受けたことは、不倫相手の慰謝料額を減額する方向に働きます。

 ④不貞関係以降、不倫をした夫(又は妻)が生活費を家計に入れなくなったことは、慰謝料額が多くなる方向に働きます。

以 上

なかむら法律事務所・司法書士事務所(和歌山市)

弁護士・司法書士 中村和也