和歌山の財産分与について(2)オーバーローンの不動産の処理
オーバーローンの不動産の処理
1.オーバーローンの不動産とは
オーバーローンの不動産とは、不動産の時価(売却価格)よりも住宅ローン残高の方が多い不動産のことをいいます。
例えば、離婚する際に、住宅ローン付きのマンションがあり、不動産業者に見積もってもらった売却額が1500万円で、住宅ローン残高が2000万円である場合、住宅ローン残高の方が500万円多いので、オーバーローンということになります。
結婚の際あるいは結婚後に、夫婦が生活するための一戸建てやマンションを住宅ローンを組んで購入したが、離婚することとなったため、オーバーローンの一戸建てやマンションをどう処理するか問題になることがあります。
2.オーバーローンの不動産は離婚の財産分与の対象になるか
夫婦が婚姻後に築いた財産について、プラス財産(不動産、預金など)よりもマイナス財産(借金、住宅ローンなど)の方が多い場合、つまり、全体としてマイナスとなる場合には、財産分与を求めることはできません。
たしかに、夫婦が婚姻後に協力して築いた財産については、他方は一方に対して、その財産の原則2分の1を分与するよう求めることができます。
しかし、財産分与の問題となるのは、プラス財産からマイナス財産を差し引いてプラスになる場合に限られるのです。
ですので、結婚以降に夫婦で築いた財産がオーバーローンの不動産しかない場合、その不動産は財産分与の対象とはなりません。
もっとも、結婚以降に夫婦で築いた財産がオーバーローンの不動産以外にも預貯金などがあり、オーバーローン分を差し引いても財産全体としてプラスになる場合、オーバーローン分を差し引いた財産を財産分与の対象とすることは可能です。
3.オーバーローンの不動産の離婚時の処理方法
では、財産がオーバーローンの不動産しかない場合に、財産分与できないとしても、オーバーローンの不動産を現実にどうするかが次に問題となります。
こういうケースを考えてみたいと思います。
マンションの所有者が夫名義、住宅ローンの債務者も夫のみ、マンションの時価(売却見積額)が1500万円、住宅ローン残高が2000万円であったとします。
この場合の処理としては、主に、(1)夫が引き続き住み続ける、(2)妻が引き続き住み続ける、(3)売却処分する、の3通りの方法が考えられます。
(1)夫が引き続き住み続ける場合
この場合、住宅ローンを支払うことは夫にとってマンションという資産を形成することになるわけですから、離婚後も、引き続き、夫が住宅ローンを支払っていくという解決になる事が多いです。
住宅ローンを完済すれば、マンションは夫のものとなります。
ただし、マンション購入時に妻側が相当程度の頭金を出した、という事情がある場合には、離婚時のマンション時価に対する頭金の貢献度を考慮して、夫が妻に対していくらかの財産分与をするということも考えられます。
(2)妻が引き続き住み続ける場合
この場合、住宅ローンをどちらが払っていくかが問題となります。
以下のような方法が考えられます。
① 妻が離婚後も無償で一定期間だけ居住することを前提に、夫が引き続き住宅ローンを支払っていく
→ただし、妻の居住期間中に、夫が住宅ローンの返済を滞納した場合、競売等により住宅を失う可能性があります。
② 妻が離婚後も無償でずっと居住することを前提に、夫が引き続き住宅ローンを支払っていき、離婚時に、またはローンを完済した時に、マンションの所有名義を夫から妻に変更する
→この場合も、妻の居住期間中に、夫が住宅ローンの返済を滞納した場合、競売等により住宅を失う可能性があります。
③ 妻が離婚後もずっと居住することを前提に、離婚以降は妻が夫の名義で住宅ローンを支払っていき、離婚時に、またはローンを完済した時に、マンションの所有者名義を夫から妻にする
→ローンを完済した時に名義変更するとした場合、将来、夫がその名義変更にきちんと協力するよう、合意書を交わしておく必要があります。
④ 妻が離婚後もずっと居住することを前提に、住宅ローンの債務者とマンションの所有者名義を共に夫から妻に変更し、以降は妻が住宅ローンを支払っていく
→夫が住宅ローンの債務者から抜けて、妻が債務者になるには、妻が住宅ローンの審査を受け、借り換えを行う必要があり、妻に収入がある程度ないと審査に通らないこともあります。
(3)売却処分する場合
この場合、マンションを売却できたとしても、住宅ローンが500万円残ることになります。
残った住宅ローンを支払う義務は、債務者と連帯保証人にしかありませんので、妻が連帯保証人になっていなければ、銀行に対する返済義務は債務者である夫のみが負うこととなります。
しかし、住宅ローンは夫婦の共同生活のために負担したものであるので、夫婦間においては、お互いに負担するべきものといえます。
よって、残った住宅ローンの返済方法や負担割合については、夫婦で話し合って決めるということになります。
以 上
なかむら法律事務所・司法書士事務所(和歌山市)
弁護士・司法書士 中村和也