和歌山の離婚調停について(なかむら法律事務所)

Ⅰ 離婚調停をすべきか

 離婚調停とは、家庭裁判所において、第三者(調停委員など)の立会いのもと、夫婦それぞれの言い分を調整し、合意を目指す手続きのことです。

 調停をすべきケースとしては、下記のようなケースが考られます。

 ①争っている事項が少ない場合(例えば、相手に支払う金額だけが合意できない場合など)

 ②主な事項は合意できているが、些細な点で合意できない場合

 ③感情的になるので、話し合い自体ができない(したくない)場合

 ④こちらの言い分の根拠となる証拠が十分そろっていない場合(審判や訴訟では解決困難な場合)

 

 

Ⅱ 離婚調停の申立てから調停成立までの手続き

1.離婚調停の申立て

(1)調停手続きの開始

 離婚調停は、夫婦の一方が家庭裁判所に調停の申立をすることによって開始します。

 申立てた方を「申立人」、申立てられた方を「相手方」といいます。

 ①婚姻費用分担調停(離婚成立までの別居期間中の生活費を定める調停)と、

 ②離婚調停(離婚するかどうか自体や親権・養育費・面会交流・財産分与・慰謝料などの離婚条件を定める調停)

を申立てるケースが多いです。

(2)調停の申立先

 申立てを行う家庭裁判所は、相手方の居住地(注:申立人の居住地ではありません)を管轄する家庭裁判所になります。

 相手方が和歌山県に居住している場合の具体的な管轄は以下のとおりです。

○和歌山家庭裁判所本庁…和歌山市、海南市、岩出市、紀の川市、海草郡(紀美野町)、有田市,有田郡(湯浅町 広川町 有田川町)、橋本市、伊都郡(かつらぎ町、九度山町,高野町) ※一部地域につき和歌山家庭裁判所妙寺出張所に申立することも可。

○和歌山家庭裁判所御坊支部…御坊市、日高郡(美浜町、日高町、由良町、印南町、日高川町)

○和歌山家庭裁判所田辺支部…田辺市(旧田辺市、旧日高郡龍神村、旧西牟婁郡大塔村、旧西牟婁郡中辺路町) 、西牟婁郡(上富田町、白浜町、すさみ町)、日高郡(みなべ町)、東牟婁郡(串本町,古座川町)

○和歌山家庭裁判所新宮支部…新宮市、田辺市(旧東牟婁郡本宮町)、東牟婁郡(那智勝浦町、太地町、北山村)

(3)調停申立に必要な書類

 申立書2部…家庭裁判所の窓口に書式が備えられています。申立内容(離婚、親権、面会交流、養育費、婚姻費用、財産分与、慰謝料)などを記載します。

 事情説明書… 家庭裁判所の窓口に書式が備えられています。これまでの経緯や事情を記載します。

 夫婦の戸籍謄本…本籍地の役所で取得します。

 収入印紙…調停1件につき1200円分必要です。

 切手…所定の種類と数量の切手が必要です。詳しくは家庭裁判所にお問い合わせください。

 

2.相手方への呼出状等の送達

 申立後、家庭裁判所から申立人に連絡があり、第1回調停期日の希望日時を聞かれます。

 家庭裁判所から、相手方に対し、申立書と第1回期日の日時が記載された呼出状などが送られます。

 この段階で、相手方は、調停の申立てがあったことや第1回期日の日時を知ることになります。

 

3.第1回調停期日

 期日に当事者が家庭裁判所に出頭すると、第1回調停期日が行われます。

 調停の進み方は、以下のとおりです。

 まず、申立人のみ調停室に入室します。その間、相手方は控え室で待機します。

 調停室には、調停委員2人と場合により調査官がいます。調停委員とは、弁護士等の資格を有する者や人格識見の高い者の中から裁判所に任命・指定された非常勤の公務員で、中立公正な立場で調停を担当する人のことです。調査官は、裁判所の職員であり、主に面会交流や親権が争われている場合において、事実調査や当事者間の調整を担当する人のことです。

 調停委員は、申立人から、これまでの夫婦関係や申立に至った経緯など、申立書の記載だけでは分からないような詳しい事情を聞きます。

 30分ほどで申立人が調停室を退出し、控え室で待機します。

 次に、相手方のみ調停室に入室します。

 調停委員は、相手方から、これまでの夫婦関係や申立書に対する意見などを聞きます。

  30分ほどで相手方が調停室を退出し、控え室で待機します

 その後も、同様に、相互に調停室に呼ばれ、双方の意見を聞きながら、合意できそうな点や争いとなりそうな点を確認、調整していきます。

 よって、夫婦が直接対面して言い争う、といったことはありません。

 第1回期日は、双方がそれぞれ1時間ずつくらい事情を聴取されますが、これまでの事情や双方の意見を確認し、合意できそうな点と争いとなりそうな点を確認するくらいで終わることが多いです。

 期日終了時には、双方がそれぞれ次回までに考えておくべき事項を確認したり、次回調停期日の日時を調整して決めます。

 だいたい月に1回のペースで期日が入れられます。

 

4.その後の調停期日

 第2回期日以降も第1回期日と同様に、別々に調停室に呼ばれ、調停委員を介して、双方の主張を調整していきます。

 金銭的な点(婚姻費用、養育費、財産分与など)に争いがある場合、双方の収入や財産を証明する書類(給与明細、源泉徴収票、課税証明書、不動産登記簿謄本、預金通帳、保険証書など)を提出することもあります。

 争いのある点が少ないケースや互いに譲歩可能なケースでは、2、3回の期日で調停成立となる場合もありますが、争いのある点が多いケースや互いに譲歩しないケースでは、1年以上、期日を重ねることもあります。

 調停は話し合いの場ですので、双方が互いに譲歩することが調停成立には不可欠といえます。

 

5.調停成立

 調整の結果、双方の譲歩によって合意ができた場合、裁判官の面前で合意内容の確認がなされ、調停が成立します。

 後日、成立した内容を書面にした「調停調書」が、裁判所で作成されます。

 離婚や親権者の合意の記載のある調停調書があれば、一方がその調停調書を役所に提出することによって離婚の手続ができます(他方の協力は必要ありません)。

 婚姻費用や養育費の支払いについて記載のある調停調書があれば、後日、婚姻費用や養育費が約束どおり支払われないときには、差押えなどの強制執行を行うことが可能になります。

 

6.調停不成立

 当事者の一方が調停期日に出頭しなくなったり、これ以上話し合っても調停での合意が困難であるという事態に陥ったときは、裁判所の判断によって調停は不成立となり、調停手続きは終了します。

 また、申立人が調停を取り下げた場合にも調停手続きは終了します。

 

7.訴訟や審判への移行

 調停が不成立となった場合、手続きを進めるためには、離婚自体に争いがあるのであれば、離婚を希望する側が離婚を求める訴訟を提起し、離婚以外の親権・養育費・婚姻費用・財産分与などに争いがあるのであれば、審判手続きをする、ということになります。