Ⅰ 民事調停をすべきか
民事調停とは、民事上の争いごとについて、簡易裁判所において、調停委員ら第三者の立会いのもと、それぞれの言い分を調整し、合意を目指す手続きのことです。
民事上の争いごと(お金の貸し借り、不動産や各種契約上の問題、損害賠償の請求、隣人トラブル、などのようなこと)について、当事者間での話し合いでは解決しない場合、最終的には訴訟で解決するということになりますが、訴訟となると、手間・時間・費用といった点で多大なコストがかかります。
そこで、いきなり訴訟するのではなく、裁判所での話し合いである「民事調停」がなされることがよくあります。
民事調停をすべきケースとしては、下記のようなケースが考られます。
①争っている事項が少ない場合(例えば、支払う金額だけが合意できない場合など)
②主な事項は合意できているが、些細な点で合意できない場合
③感情的になるので、話し合い自体ができない(したくない)場合
④こちらの言い分の根拠となる証拠が十分そろっていない場合(訴訟では解決困難な場合)
⑤訴訟をすると、費用倒れになる場合
Ⅱ 民事調停の申立てから調停成立までの手続き
1.民事調停の申立て
(1)調停手続きの開始
民事調停は、当事者の一方が簡易裁判所に調停の申立をすることによって開始します。
申立てた方を「申立人」、申立てられた方を「相手方」といいます。
(2)調停の申立先
申立てを行う簡易裁判所は、相手方の居住地(注:申立人の居住地ではありません)を管轄する簡易裁判所になります。
具体的な管轄は以下のとおりです。
○和歌山簡易裁判所…和歌山市、海南市、岩出市、紀の川市、海草郡(紀美野町)
○湯浅簡易裁判所…有田市、有田郡(湯浅町、広川町、有田川町)
○妙寺簡易裁判所…紀の川市(旧那賀郡粉河町、旧那賀郡那賀町)、橋本市(旧伊都郡高野口町)、伊都郡(かつらぎ町)
○橋本簡易裁判所…橋本市(旧橋本市)、伊都郡(九度山町、高野町)
○御坊簡易裁判所…御坊市、日高郡(美浜町、日高町、由良町、印南町、日高川町)
○田辺簡易裁判所…田辺市(旧田辺市、旧日高郡龍神村、旧西牟婁郡大塔村、旧西牟婁郡中辺路町) 、西牟婁郡(上富田町、白浜町、すさみ町)、日高郡(みなべ町)
○串本簡易裁判所…東牟婁郡(串本町、古座川町)
○新宮簡易裁判所…新宮市、田辺市(旧東牟婁郡本宮町)、東牟婁郡(那智勝浦町、太地町、北山村)
(3)調停申立に必要な書類
申立書2部…簡易裁判所の窓口に書式が備えられています。申立内容(相手に求める内容、これまでの経緯や事情)などを記載します。
証拠書類…事件の説明に役立つ資料を添付します。
収入印紙…事件の内容によって異なります(例:訴額100万円で印紙5000円、訴額300万円で印紙1万円)。詳しくは裁判所にお問い合せ下さい。
切手…所定の種類と数量の切手が必要です。詳しくは裁判所にお問い合わせください。
2.相手方への呼出状等の送達
申立後、裁判所から申立人に連絡があり、第1回調停期日の希望日時を聞かれます。
裁判所から、相手方に対し、申立時に提出された申立書1部と第1回期日の日時が記載された呼出状などが送られます。
この時点で、相手方は申立の内容や第1回期日の日時を知ることになります。
また、申立書に対する意見を記載する書面も相手方に送られてきますので、意見を記載したうえで第1回期日に持参することとなります。
3.第1回調停期日
期日に当事者が裁判所に出頭すると、第1回調停期日が行われます。
調停の進み方は、以下のとおりです。
まず、申立人側のみ調停室に入室します。相手方は控え室で待機します。
調停室には、調停委員2人と場合により調査官がいます。調停委員とは、弁護士等の資格を有する者や人格識見の高い者の中から裁判所に任命・指定された非常勤の公務員で、中立公正な立場で調停を担当する人のことです。
調停委員は、申立人から、これまでの事情や申立に至った経緯など、申立書からだけでは分からないような詳しい事情を聞きます。
30分ほどで申立人側が調停室を退出し、控え室で待機します。
次に、相手方側のみ調停室に入室します。
調停委員は、相手方から、これまでの事情や申立書に対する意見などを聞きます。
30分ほどで相手方側が調停室を退出し、控え室で待機します
その後も、同様に、相互に調停室に呼ばれ、双方の意見を聞きながら、合意できそうな点や争いとなりそうな点を確認、調整していきます。
よって、当事者が直接対面して言い争う、といったことはなされません。
第1回期日は、双方がそれぞれ1時間ずつくらい事情を聴取されますが、これまでの事情や双方の意見を確認し、合意できそうな点と争いとなりそうな点を確認するくらいで終わることが多いです。
期日終了時には、双方がそれぞれ次回までに考えておくべき事項を確認したり、双方の都合のよい次回調停期日の日時を調整して決めます。
だいたい月に1回のペースで期日が入れられます。
4.その後の調停期日
第2回期日以降も第1回期日と同様に、別々に調停室に呼ばれ、調停委員を介して、双方の主張を調整していきます。
争いのある点が少ないケースや互いに譲歩可能なケースでは、2、3回の期日で調停成立となる場合もありますが、争いのある点が多いケースや互いに譲歩しないケースでは、1年以上、期日を重ねることもあります。
調停は話し合いの場ですので、双方が互いに譲歩することが調停成立には不可欠といえます。
5.調停成立
調整の結果、双方の譲歩によって合意ができた場合、裁判官の面前で合意内容の確認がなされ、調停が成立します。
後日、成立した内容を書面にした「調停調書」が、裁判所で作成されます。
金銭などの支払いについて記載のある調停調書があれば、後日、義務が約束どおりなされないときには、差押えなどの強制執行を行うことが可能になります。
6.調停不成立
当事者の一方が調停期日に出頭しなくなったり、これ以上話し合っても調停での合意が困難であるという事態に陥ったときは、裁判所の判断によって調停は不成立となり、調停手続きは終了します。
また、申立人が調停を取り下げた場合にも調停手続きは終了します。
7.訴訟や審判への移行
調停が不成立となった場合、解決するためには訴訟を提起する、ということになります。